そば(ソバ)

日本語の「そば(蕎麦)」には二つの意味がある。一は本稿において詳述する蕎麦粉を用いた麺類の謂で、日本農林規格(JAS)においては30%以上の蕎麦粉を用いた麺を蕎麦と言う。

●そばの栄養成分

栄養はでんぷんが主体だが、産地や収穫時期によって多少の違いがある。

また、穀物全般がそうであるように、実の内部(胚乳部が中心)と表層部(甘皮周辺)とでは、成分組成が大きく異なる。そのため、蕎麦粉は、実の中心部から順に一番粉、二番粉、三番粉と製粉されるため、それぞれの栄養成分にはかなりの違いが出てくるのである。実の表層に近づくにつれて蕎麦粉の色が濃くなるのは、セルロースなどの不消化成分が多くなるためだが、その他の栄養成分の含量も増える傾向にある。挽きぐるみ(全層紛)の場合、蕎麦粉には13%のタンパク質が含まれる。これは豆類を除く穀類一般の中で最も高い含有率である。

しかも、タンパク質の栄養価を表す目安となるタンパク価は、白米の72、小麦粉の47、に対して72〜76と植物性タンパクのなかでも非常に良質の物である。また、必須アミノ酸としては、小麦粉に特に不足しているリジンと白米に含量の少ないトリプトファンとに富んでいる。反対に蕎麦粉の不足アミノ酸メチオニン+シスチンであるが、これは小麦粉に多い。したがって蕎麦粉と小麦粉を混ぜて作る蕎麦切りは、タンパク質補給の点で理にかなった形になっている。

一方、ビタミンなどの微量成分の組成も特徴的である。蕎麦粉中にはビタミンAおよびビタミンCはほとんど含まれないが、ビタミンB群はかなり含まれている。特に日本人に不足しがちなビタミンB1、それにビタミンB2が多く含まれ、米や小麦粉の約2倍の含有量である。また、蕎麦粉にはルチンが多く含まれていることもよく知られるようになった。ルチンは毛細血管の働きを安定・強化させ、脳出血や出血性の病気に予防効果があるといわれている。なお最近特にその重要性が注目されている食物繊維の含有率も約5%と高く、白米の2.5倍になる。